第13章 — フレームワーク大全: 何を選び、どう組み合わせるか
「全部自作するの?」
ユウキのハーネスは充実してきたが、メモリ管理、ガードレール、サンドボックス、観測可能性——すべて自作するのは現実的ではない。
ミサキが助け舟を出した。「2025年はハーネスフレームワーク元年。ゼロから作る必要はない。ただし、何が何をするのかを理解した上で選ばないと、逆に振り回される」
ETCLOVG 七層分類
学術論文で提唱された ETCLOVG 分類法が、ハーネスの構成要素を体系化している。
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| 層 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| Execution | コードを安全に実行する環境 | サンドボックス、MicroVM、コンテナ |
| Tooling | AI が使えるツールと接続方法 | MCP、ファイルシステム、Web 検索 |
| Context | AI に与える情報と記憶 | CLAUDE.md、RAG、自動メモリ |
| Lifecycle | タスクの計画・分解・進捗管理 | タスクグラフ、write_todos |
| Observability | 何が起きたかを見る仕組み | トレーシング、トークンコスト追跡 |
| Verification | 出力の正しさを検証する仕組み | テスト実行、ガードレール、LLM-as-Judge |
| Governance | 権限とポリシーの強制 | 権限設定、フック、監査ログ |
ハーネス vs フレームワーク vs SDK
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| 種類 | 定義 | 例 |
|---|---|---|
| ハーネス | ループを所有。ツール実行の許可/拒否、予算管理、観測を行う | Claude Code, Archon |
| フレームワーク | ループの構成部品を提供。組み立ては開発者 | LangGraph, CrewAI, OpenAI Agents SDK |
| SDK | 特定サービスへの接続を提供 | Anthropic SDK, OpenAI SDK |
主要ツール カタログ
統合ハーネス
Claude Code
全7層をカバーする統合ハーネス。CLI ネイティブ。
- CLAUDE.md(Context)+ Hooks(Governance)+ MCP(Tooling)+ サンドボックス(Execution)
- Dynamic Workflows で大規模オーケストレーション
- サブエージェント、Skills、Commands による拡張
Archon
YAML でワークフローを定義するハーネスビルダー。OSS。
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- 各実行が独立した Git Worktree で動作(5つの修正を同時実行)
- エージェント非依存(Claude Code, Codex CLI, 将来のツールにも対応)
- Web UI でモニタリング
オーケストレーション・フレームワーク
LangGraph
有向グラフベースで最も柔軟な制御フロー。本番実績 No.1。
- チェックポイントで状態永続化
interrupt_beforeでヒューマンインザループ- 本番 AI エージェントの 51% が LangGraph で稼働
CrewAI
ロールベースのチーム設計が直感的。学習曲線が最も緩やか。
- プロトタイピングに最適
- トークンオーバーヘッド約18%(LangGraph 比)
- 本番は LangGraph に移行するパターンが多い
OpenAI Agents SDK
2025年に大幅リアーキテクチャ。ハーネスとコンピュートを分離。
- 7つのサンドボックスプロバイダを標準サポート
- 100以上のモデルに対応
ガードレール・検証
NVIDIA NeMo Guardrails
5種類のレール: Input / Dialog / Retrieval / Execution / Output
- Colang 2.0 DSL でプログラム可能なルール定義
- ジェイルブレイク検出、PII フィルタ、毒性検出、ハルシネーション検出
Guardrails AI
50以上の事前構築バリデータ(PII、毒性、ハルシネーション、バイアス等)
観測可能性
| ツール | 種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| Langfuse | OSS | エージェントの全ツール呼び出しをトレース、コスト追跡 |
| LangSmith | SaaS | LangChain ネイティブ、評価パイプラインと A/B テスト |
| Braintrust | SaaS | MCP サーバーによる IDE 内トレースクエリが最も成熟 |
サンドボックス・実行環境
| ツール | 隔離レベル | 特徴 |
|---|---|---|
| E2B | MicroVM | AI エージェント特化のクラウドサンドボックス |
| Daytona | コンテナ | OpenAI / Anthropic 公式サポート |
| Modal | コンテナ | サーバーレス GPU コンピュート |
| Firecracker | MicroVM | AWS 開発、最高レベルの隔離 |
| gVisor | ユーザースペースカーネル | Google 開発 |
選び方ガイド
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レベル別推奨スタック
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| レベル | スタック | コスト感 |
|---|---|---|
| 入門 | Claude Code + CLAUDE.md | 月$20〜100 |
| チーム | Claude Code + Hooks + カスタムエージェント | 月$100〜500 |
| プロ | Archon + Claude Code + Langfuse | 月$500〜2000 |
| エンタープライズ | LangGraph + NeMo Guardrails + E2B + LangSmith | 月$2000〜 |
Gartner の予測
INFO
「2026年末までに企業アプリケーションの 40% がタスク特化型 AI エージェントを含む。差別化はハーネス層に移行する」— Gartner
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ユウキの選択
ユウキのチーム(8人のスタートアップ)が選んだスタック:
- Claude Code — 統合ハーネスとして(CLAUDE.md + Hooks + Skills + Subagents)
- Langfuse — 観測可能性(トークンコスト追跡、トレース)
- Biome + Vitest — 構造的検証(PostToolUse Hook で自動実行)
「最初から全部入れる必要はない。Claude Code で始めて、必要に応じて層を追加していく。それが一番現実的だ」
次の章では、ここまで学んだすべてを統合し、実際のプロジェクトにゼロからハーネスを組む実践ガイドに入る。